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我々は、経営者を株主の代理人であると説明した。しかし、多分、それでは「経営者が株主の利己的な利益のために行動することは望ましいのか」との問題が提起されよう。株主を豊かにすることを中心に考えるということは、経営者が、弱者や無力な人々を手荒く扱う傭兵として行動しなくてはならないことを意味するのであろうか。

このブログでは、企業の価値を増やす財務上の政策にあてられている。これらの政策は、いずれも弱者や無力な人々を踏みつけることを必要としない。たいていの場合、業績を上げる(価値を最大化する)ことと良いことを行うこととの間にほとんど矛盾は生じない。収益力のある企業では、顧客は満足し、従業員は忠実である。他方、顧客も労働者も不満を持っている企業では、おそらく最終的には利益が減少し、また、株価も安くなるだろう。

もちろん、我々が企業の目的は株主の富を最大化することであると言うときに、何でも許されるといっているのではない。法律は、経営者がはなはだしく不正な決定を行うことを抑止している。しかし、たいていの経営者は、単に、法律の文言に従ったり、あるいは、書面の契約を守ったりすることだけに気を使っているわけではない。ビジネスとファイナンスにおいても、他の日々の営みにおけると同様、文書化されていない暗黙の行動ルールがある。効率的に一緒に仕事をするためには、我々はお互いを信頼しあう必要がある。このため、巨額の金融取引は、握手を持って成立するのが常なのである。そして、それぞれの側はもし状況が悪化したとしても他の側が後で約束を破ることはないであろうということを知っている。

多くの金融取引では、一方が他方より多くの情報を持っている。買おうとしている財やサービスの品質を確認することは難しいことがある。このため、金融上のいんちきやあからさまな詐欺の機会が数多くあり得ることになる。誠実な企業の対応は、顧客との長期的な関係を作り、公正な取引及び財務の健全性についての評判を築くことによって自社の地位を確立することである。主要な銀行や証券会社は、その最も貴重な資産が自らの評判であることを知っている。その評判を傷つける何かが起これば、そのコストは巨額なものとなろう、ここに、その例を示そう。

マーケットタイミング・スキャンダル
投資信託(ミューチュアルファンド)業界は、2003年下半期に、マーケットタイミング・スキャンダルに直面した。マーケットタイミング取引とは、世界の様々な地域に所在する市場が異なった時間に閉じることを言うことをうまく利用しようとする取引である。米国株式市場が急騰していれば、アジアやヨーロッパの翌日の市場では、株価は上昇するだろう。国際的に投資しているミューチュアルファンドを、米国市場の急騰の前の価格で購入できるトレーダーは、相当の利益を上げることができる。同じような利益の機会は、米国市場が急落したときに、急落前の価格で国際的なミューチュアルファンドを売り抜けられるトレーダーにもある。米国の投資信託会社は、このような取引を行わせないことになっているが、こうしたことを行った会社があった。このスキャンダルが明るみに出ると、これらの会社では巨額の解約が発生し、将来の収入と利益の見込みが著しく低下した。例えば、パトナム・インベストメントがマーケットタイミング取引を許していたことを明らかにした後には、同社のファンドから2ヶ月間に300億ドルに及ぶ資産の流出が生じた。パトナムに対しては1億ドルの罰金が貸され、1,000万ドルの賠償を行うこととされた。
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